
金のスキャルピングに優位性はあるか探した
金(XAUUSD)という銘柄で、スキャルピング(数秒から数分で細かく利益を積み重ねる手法)のロジックを作ろうと試みました。
金(XAUUSD)という銘柄で、スキャルピング(数秒から数分で細かく利益を積み重ねる手法)のロジックを作ろうと試みました。 今回の検証では、平均回帰(ボリンジャーバンドの逆張りやRSIを使った「行き過ぎたら戻る」という性質を狙うもの)と、ブレイクアウト(ドンチャンチャネルを使って「価格が突き抜けた方向に勢いがつく」ことを狙うもの)という2つのモードを用意しました。これに時間軸(5分・15分・30分)とグリッド幅の組み合わせを加え、合計204通りのパターンでスクリーニング(絞り込み)を行いました。期間は2018年から2025年まで、取引コストを差し引いた後の純利益で評価しています。
検証結果
| 手法 | 期間成績 | PF |
|---|---|---|
| 全204通り | - | - |
| 最良(M15 平均回帰) | +6.5%(7年間) | 1.04 |
| 純利益がプラスで、かつPF(プロフィットファクター=総利益÷総損失。1を超えると黒字)が1を超えたのは、204通り中わずか3つだけでした。これは統計学的に「たまたま上手くいっただけのノイズ」の範囲内です。最も良かったM15の平均回帰でも、7年間のトータルでプラス6.5%(年利に換算すると約0.9%)という結果であり、実用的な優位性(エッジ)があるとは言えません。 |
なぜうまくいかないのか
最大の原因は「コスト感度」の高さです。金のスプレッド(売値と買値の差額=取引手数料)が少し広がるだけで、成績は劇的に悪化しました。
- スプレッド 20pip($0.20)で +6.5%
- スプレッド 35pip で -13.6%
- スプレッド 50pip で -30% この手法が機能するのは、スプレッドが$0.20という理想的な条件下のみでした。しかし、現実の金市場ではスプレッドが$0.30〜0.50程度かかることも珍しくありません。つまり、この手法が狙うわずかな利幅は、取引コストを払った時点で消滅してしまうのです。
後知恵を排除した検証
さらに、過去のデータに過剰適合するのを防ぐため、2年間のデータで学習し、その後の1年間で検証するという工程を繰り返す「ウォークフォワード分析」を行いました。結果は通算でマイナス7.0%、5年間のうち勝ち越したのはわずか1年という惨憺たるもので、頑健な優位性は存在しないと判断せざるを得ません。 金でスキャルピングを行うには、スプレッドという高い壁を越えるだけの大きな利幅が必要です。しかし、大きな利幅を狙うなら必然的に保有期間が長くなり、それは「スキャルピング」という手法そのものと矛盾してしまいます。 過去の検証でも確認した通り、高頻度で売買を繰り返す手法は、金の広いスプレッドの前ではコスト倒れになります。金で利益を狙うのであれば、スキャルピングのような短期決戦ではなく、より長い時間軸でトレンドを追う手法が必要ですが、それもまた別の難しさがあるというのが現状の結論です。
この検証のつながり
この検証は、過去の次の検証を踏まえています(前回ダメだった→今回こうした、別ロジックとの比較など)。