
教科書のライン・ブレイク手法を数値化して測った
トレンドラインを引いて、ブレイク後に戻ってきたところ(リターンムーブ)を狙って「1波目」を捉えるという手法を検証しました。

図: ブレイクアウトのエントリー例(XAUUSD 日足・実データ)。直近の高値を上抜けたところで買います。
トレンドラインを引いて、ブレイク後に戻ってきたところ(リターンムーブ)を狙って「1波目」を捉えるという手法を検証しました。 「トレンドの方向に乗るタイプ(継続A)」と「トレンドを否定して逆を狙うタイプ(転換B)」、それぞれに「ロングのみ」と「両建て」の計4パターンを用意し、厳密に比較しています。トレンドラインは過去の数値を先読みしないよう、確定した2点から引くルールを徹底しました。
最初の関門は突破したが…
検証の結果、驚いたことに「継続A・両建て」のパターンが、最初の審査をクリアしました。前進検証(過去のデータで期間を区切って順次最適化するテスト)では通算プラス44%、6年中の5〜6年で勝ち越し、最悪の損失もマイナス3.0%に収まっています。さらに、パラメータを少し変えても結果が安定する「頑健性(がんけんせい)」も確認できました。 しかし、この手法はここから先が通用しませんでした。
なぜこの手法は採用できなかったのか
順を追って検証していくと、致命的な弱点が次々と見つかりました。
- 時間軸(TF)をまたぐと通用しない 1時間足では優秀でも、4時間足や日足に切り替えると成績が急降下します。日足では通算マイナス6.9%まで落ち込みました。本物のトレンド手法は時間軸が変わってもある程度機能するものですが、これは1時間足特有のノイズにたまたま適合していただけのようです。
- 日中の値動き(M1日中)で大敗 1時間足のバー(ローソク足)単位で見ると問題ないのですが、1分足に細分化して日中の動きを詳しく見ると、最大でマイナス6.66%の損失が発生。日次の損失が5%を超える日が4回もありました。両建てにしたことで、日中の相関の崩れが逆に損失を広げてしまったのです。
- 「過去の勝者」を追いかけているだけ 毎年データを再選抜すれば成績は良いですが、2015年から固定して運用すると、PF(プロフィットファクター=総利益÷総損失。1を超えると黒字)は1.04、最大ドローダウン(資産の山からの下落率)はマイナス24.9%と、とても運用に耐えられません。これは手法そのものの優位性(エッジ)ではなく、単に「過去に勝ったものを後追いしている」に過ぎません。
ロングのみに絞っても解決しない壁
「ショート側が悪さをしているのでは?」と考え、ロングのみのパターンも検証しました。確かにこれで日中の損失リスクは減り、4時間足の成績も改善しました。 しかし、日足の崩壊や、MC(モンテカルロ合格率=再標本化してプロップ合格確率を推定した値)での失格判定は消えません。リスクを抑えてドローダウンを10%以内に収めようとすると、今度は年利が1.3%程度まで縮小してしまい、わざわざ運用する意味がなくなってしまいます。 結局、今回のトレンドラインを土台にした手法は、これ以上調整を重ねても「データへの過剰適合」になるだけと判断し、デプロイ(運用導入)を見送ることにしました。 今回の検証で改めて分かったのは、多段審査の重要性です。最初の数ステップを通過したとしても、より厳しい条件を課すことで、偽の優位性を正しく見抜くことができました。この検証基盤はしっかり機能しているので、今のシステムには変更を加えません。このトレンドラインの仕組み自体は、また別の仮説を試す時のために残しておきます。
この検証のつながり
この検証は、過去の次の検証を踏まえています(前回ダメだった→今回こうした、別ロジックとの比較など)。