質は上がるのに利益は増えない改善の典型例

却下手法 · 1 min

「保ち合い(レンジ)を抜けたあとのトレンドを狙う」という手法は、FXでは定番の考え方です。今回は、この「保ち合いからの継続ブレイク」を機械的にルール化したら、本当に利益を生む優位性になるのかを検証しました。

図: ブレイクアウトのエントリー例(XAUUSD 日足・実データ)。直近の高値を上抜けたところで買います。

図: ブレイクアウトのエントリー例(XAUUSD 日足・実データ)。直近の高値を上抜けたところで買います。

「保ち合い(レンジ)を抜けたあとのトレンドを狙う」という手法は、FXでは定番の考え方です。今回は、この「保ち合いからの継続ブレイク」を機械的にルール化したら、本当に利益を生む優位性になるのかを検証しました。 具体的には、「移動平均線より上」「ADXでレンジを判定」「上位足のトレンド方向と一致」「重要ライン付近でのブレイク」という複数のフィルタを重ねることで、トレードの質がどう変わるかを確認しています。

フィルタを重ねるほど月利が下がった

まずは、過去のデータ(インサンプル)でフィルタを段階的に増やした結果を見てみましょう。

構成PF最大ドローダウン
基本モデル(フィルタなし)1.06-21%
全フィルタ適用1.14-14%
このように、フィルタを重ねることで「質の低いトレード」が除外され、PF(プロフィットファクター=総利益÷総損失)が改善し、ドローダウン(登山でいう「どれだけ下りに転じたか」のような資産の減少率)も抑えられました。選別効果自体は本物です。
しかし、ここからが検証の厳しいところです。未知のデータを用いた前進検証(OOS)で、フィルタを組み合わせた複数のバリエーションをテストしたところ、頑健性(さまざまな相場環境で通用する強さ)の基準を満たすものが一つもありませんでした。
もっとも成績が良かったのは「レンジ判定+MTF(上位足のトレンド)+ライン判定」をすべて入れたモデルで、6年間のうち4年でプラス(4/6年)という結果でしたが、フィルタなしの基本モデルと比べても大きな改善は見られません。

結局は「同じトレンドフォロー」の焼き直し

検証を進めていくと、フィルタを重ねたモデルと基本モデルの相関が「+0.83」と非常に高いことが分かりました。これは、新しい優位性を見つけたのではなく、単に「既存のトレンドフォローの入り方を少し変えただけ」であることを意味します。 M1最悪(1分足で日中の口座推移を再構築した際の最悪の日次損失)は5.19%で、リスク0.003の運用でも特定の日に集中して損失が出るリスクを抱えています。Sharpeレシオ(収益の安定性を示す指標)は1.05と滑らかですが、既存のシステムと併用しても分散効果(リスクを打ち消し合う効果)は期待できません。

偽の優位性を見破るフィルタリング

後続の検証として、ボラティリティの収縮(NR)や斜めチャネルを用いた派生版もテストしました。特にNR版は、最初のテストでは「5/6年プラス」という非常に魅力的な結果が出たため、一瞬期待してしまいました。 しかし、パラメータの頑健性や相関、M1最悪を確認する「確認ゲート」を通すと、その優位性は崩壊しました。NR版の相関は+0.86と、ADX版よりもさらに高く、完全に既存トレンド手法の亜種です。 今回の検証で改めて分かったのは、多重検定(パラメータをたくさん変えて試すこと)を行うと、たまたま成績が良く見える「境界ノイズ」が必ず発生するということです。今回の検証基盤は、そうした偽の優位性を、頑健性や相関のチェックでしっかりと弾き出すことができました。 結論として、今回検証した「継続ブレイク」の仕組みは、既存システムの代替や分散材料にはなり得ません。システムに変更は加えず、現状のまま運用を続けます。この「同じトレンドフォローを少し違う入り方で取る版」に収束してしまう現象は、過去の検証でも繰り返されており、改めて「価格の頑健な優位性(エッジ)はシンプルにトレンドを追うことにある」と再確認する結果となりました。

この検証のつながり

この検証は、過去の次の検証を踏まえています(前回ダメだった→今回こうした、別ロジックとの比較など)。