レンジバーの好成績はバーの作り方が生む錯覚だった

却下手法 · 1 min

レンジバー(一定の値幅ごとに新しいバーを作る手法)を使って、ブレイクアウト戦略を構築する検証を行いました。

図: ブレイクアウトのエントリー例(XAUUSD 日足・実データ)。直近の高値を上抜けたところで買います。

図: ブレイクアウトのエントリー例(XAUUSD 日足・実データ)。直近の高値を上抜けたところで買います。

レンジバー(一定の値幅ごとに新しいバーを作る手法)を使って、ブレイクアウト戦略を構築する検証を行いました。 結論から言うと、この手法は採用しません。一見すると非常に優秀な成績に見えるものの、実は「構造的な罠」が潜んでいることが分かったからです。

出来すぎた成績の正体

今回の検証では、通常の時間足(M15など)ではなく、ATR(価格の変動幅を示す指標)をベースにしたレンジバーに変換し、そこでロング専用のドンチャン・ブレイク(一定期間の最高値を更新したら買う手法)を試しました。 結果を見ると、すべての銘柄でPF(プロフィットファクター=総利益÷総損失。1を超えると黒字)が2.0から2.7という高い数値を叩き出しました。普段使っている時間足ベースのEAが1.2から1.4程度であることを考えると、驚異的な数字です。 しかし、ここで違和感を覚えました。本来なら優位性(エッジ)が見当たらないはずのEURUSDやAUDUSDでも同じように高いPFが出ているのです。すべての銘柄で一様に高い成績が出るのは、市場の性質というより、手法そのものに何か仕掛けがある可能性が高いと判断しました。

ランダムウォークによる検証結果

そこで、この手法が本当に市場のゆがみを捉えているのかを確認するため、ランダムウォーク(値動きを完全にランダムにしたデータ)を使って同じ手法をテストしてみました。

検証対象PF(プロフィットファクター)
実銘柄(EURUSD等)2.0 〜 2.7
ランダムウォーク(偽のデータ)3.2 〜 3.75
驚いたことに、ランダムなデータの方が実銘柄よりも高いPFを記録しました。これは、レンジバーの形成プロセスそのものに「先読みバイアス(未来の情報を知っているかのような有利な判定)」が含まれていることを意味しています。
レンジバーの作成ルールや、ドンチャン・ブレイクの判定の組み合わせが、計算上の構造として「都合よく勝てる」形を作り出していたのです。いわば、これは「プラセボ(偽薬)効果」のようなもので、中身がないのに成績だけが良く見える状態でした。1つのバーで1つのブリック(ブロック)しか作らないよう制限をかけても、このバイアスは解消されません。

今回の学び

今回の検証で、レンジバーのような「バーの構成を加工する手法」には、意図せず構造的なバイアスが入り込みやすいことを再確認しました。 新しいロジックを作る際は、今回のようにランダムなデータを通しても同じような成績が出るかを確認する「プラセボ検証」が不可欠です。いくらバックテストの数字が良くても、それが市場の性質によるものなのか、単なる計算上のトリックなのかを見極めなければ、実運用で痛い目を見るのは自分自身だからです。今回はシステムに変更を加えず、この手法は却下とします。

この検証のつながり

この検証は、過去の次の検証を踏まえています(前回ダメだった→今回こうした、別ロジックとの比較など)。