下落を先読みする信号でFX核だけ改善した話

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前回の研究で、相関の「大きさ」だけを見ていてもリスクオフの判断には役立たないことが分かりました。そこで今回は、もう少し踏み込んで「方向を伴う下落先行信号」を使えば、ドローダウン(資産の山からどれだけ下落したかを示す指標)を抑えられるのではないかと考え、検証を行いました。

前回の研究で、相関の「大きさ」だけを見ていてもリスクオフの判断には役立たないことが分かりました。そこで今回は、もう少し踏み込んで「方向を伴う下落先行信号」を使えば、ドローダウン(資産の山からどれだけ下落したかを示す指標)を抑えられるのではないかと考え、検証を行いました。 現在使っているフィルタ(US500がSMA200を下回ったらリスクオフとする手法)よりも優れた信号を探すため、価格データの中から「速い移動平均線(SMA100や50)」「モメンタム(勢い)」「指数ボラティリティの急騰」「複数の指数でのブレッド(広がり)」といった候補をテストしています。

FX核単体では「速いSMA」が有効

まずはシステム全体ではなく、FX核(EAの中核となるロジック)単体で動かしてみました。すると、SMAの期間を短くして反応を速くするほど、結果が単調に改善することが分かりました。

フィルタ設定最大ドローダウンリスク調整リターン(r/DD)
SMA200(基準)-7.4%0.24
SMA100-6.9%0.25
SMA50-6.5%0.27
SMA200から50へと期間を短くするほど危機をいち早く察知できるようになり、過学習のような不自然な挙動ではなく、トレンドの方向性として理にかなった改善が見られます。ただし、期間別の成績を見ると、危機的な時期には強い反面、2021年から2024年の強いトレンド相場では利益を削ってしまうため、4年間のうちプラスになったのは2年だけでした。

システム全体では改善せず

ところが、これをフルシステム(v1.4.1)に組み込むと話は別です。FX核単体では優秀だったSMA50を使っても、システム全体の最大ドローダウンは基準の9.6%に対して9.7%と、ほとんど変わりません。SMA100に至っては10.3%にまで悪化してしまいました。 これまでの研究でも何度か直面した「核の改善がシステム全体の改善に直結しない」という壁に、今回もぶつかった形です。システム全体のドローダウンは、それぞれのスリーブ(売買ロジックの束)同士が重なって損をする「相関ドローダウン」によって決まります。そのため、一つの核の判断を速くしたところで、システム全体の限界値は変わらないという結論に至りました。

「M1最悪」への効果はあり

唯一の収穫は、SMA50を使うことで「M1最悪(1分足で日中の口座推移を再構築した際の、最悪の日次損失率)」が2.42%から1.69%に改善したことです。 これは、危機を早く察知することで日中の急激な損失の吐き出しを抑えられたことを意味します。ドローダウンを劇的に減らすことはできませんでしたが、攻めた設定や高レバレッジで運用する際の「安全弁」としては有効かもしれません。とはいえ、v1.4.1の標準設定は、現状のままSMA200で据え置くことにします。

システムドローダウンの制約について

一連の研究(116〜118)を通じて確信したのは、システムドローダウンという「利益を縛る真の制約」は、単一スリーブの調整では下げられないということです。どれだけリスクオフのタイミングを工夫しても、システム全体の壁はビクともしませんでした。 ドローダウンを真に下げるには、既存の価格データから捻り出す工夫ではなく、全く別のデータや新しいアセット(資産)を使って「真に無相関な正EV(期待値がプラス)のスリーブ」を組み込むしかなさそうです。今回の検証で、現在のv1.4.1がドローダウンを抑えるという意味で、すでに一定の限界(フロンティア)に達していることが改めて確認できました。

この検証のつながり

この検証は、過去の次の検証を踏まえています(前回ダメだった→今回こうした、別ロジックとの比較など)。